第16章 挨拶
「お母さん、私は確かに最初は弟のように思ってカカシ君に接していたよ。だけど、カカシ君が成長するにつれて、彼をひとりの男性として、見るようになったの。彼をちゃんと好きなの、男として。だから彼からのプロポーズも喜んで受けたんだよ。」
真剣な表情を見せ私はまじめに言った。
自分の気持ちを初めて母に言い、少し震えていた。
リビングに戻り、母はコーヒーを私の分を入れてソファに座る。私も促されるように対面して座った。
お母さんが先ほどの顔とは違い、少し笑っている。
「花奏って全然恋愛に興味無かったから大丈夫かなぁーって心配してたのよ。なーんだ、いたんだ。良かった、このまま嫁に行けないままだったらどうしようかと思ってたから。」
クスクス笑う母は、意外と上機嫌だった。
一切告白もデートの誘いもバッサバッサとお断りしていることは母も知っている。
父も見兼ねて何回かお見合いの話を持ち出され、そのたびに結婚に興味がないとキッパリお断りし、両親に心配をかけてしまっていた。
「カカシ君の事、お母さんは認めてくれるんだね?」少し上滑る声で聞けば、お母さんは私と同じ真面目な顔をする。
「あのね、泣くのは花奏なのよ?分かってるのね?だったらお母さんは何も言わない。あなたはもう自分の事は自分で判断出来る大人なんだからね。」
「大丈夫だよ、もし仮にそういう状況になっても、ちゃんと受け入れるよ。」
私は母の前ではスラスラと自分の意見を言えた。父親の前ではどうも恐怖心が先に出てしまい、ちゃんと言えない。私はさらに母にカカシ君への思いを伝えた。
「カカシ君は……お父さんを小さい時に亡くして一人で今まで生きてきたんだよ、私がずっとそばにいたいって思えたのは、男性の中でカカシ君以外いなかったよ。告白されたって全部断ってきたんだから。」
今までの出会いを全て拒否してきた理由を述べれば、母は少し口もとを緩ませる。