第16章 挨拶
カカシ君と私は、数ヶ月ぶりに帰省する実家へ向かうため、賑やかな街並みを歩いている。
最近そういや全然顔を出していない。
あの強情で意地っ張りで、昔ながらの堅物なお父さんに、何か酷い事言われないだろうかと蒼ざめたり、そのせいでカカシ君が深く傷つかないだろうかと心配したり、自分の顔を忙しく変化させながら私は歩いている。
彼に迷いはないらしく、先程から落ち着き、一つも取り乱していない。
カカシ君は、もしかして、この日を前々から決意していたんじゃないか……そんな風に捉えてしまう。
まるで全てを受け入れるように、ずっと彼は穏やかな表情で歩いている。
「花奏さんのお父さんってお酒は何が好き?」
カカシ君が不意に聞く。
「え⁈うーーん、お父さんはねー、ビールに焼酎、日本酒、酎ハイ、ハイボール、ワインに、ウイスキーだね。」
私は自分の父親が普段飲んでいる酒を思い出しながら答える。
「ふ、それって、ほぼ全部じゃない。花奏さんのお父さんは、お酒が好きなんだね。ふふ……」
カカシ君が顔を少し緩ませながら笑う。
彼が今笑った理由は、私がお酒を全く飲めない事を知っているからだ。
私の実家では代々受け継がれた酒豪が揃うーーが、その中で唯一、私だけが一滴も飲めない下戸。
「人生の半分を損をしている」と、家族に言われ続け、その口癖がたまに出てくる。親戚中の集まりの時、私の疎外感は常に半端ない。