第14章 初夜
「花奏さん…?」
リビングに響く少し不安な声が聞こえ、私は落ち着いた言葉を口にする。
「こっちだよ、カカシ君。」
寝室のベッドの上に座って待っていれば、リビングの明かりに照らされ、逆光ぎみにカカシ君がドアに立っている。
「……電気付けないの?」
「リビングはついてるから見えるよ。やっぱり恥ずかしいもん。」
「……まさかここで待ってるなんて思わなかったよ、花奏さん、どうしたの急に…。ビックリするじゃない…」
カカシ君が少し苦笑いしながら戸惑っている。
こんなあからさまに、受け入れ体制を整えるとは思わなかったみたいだ。
「カカシ君、心配しなくても大丈夫だよ。私ね、ちゃんと今、覚悟してるし、もう準備バッチリだよ。ふふ、凄い?」
ちょっとあどけて笑えば、カカシ君が固まり、顔が強張った。図星かな?そう思うと可愛く感じた。
「オレは花奏さんを今日抱くって決めてたよ。だけど…そうだね。花奏さんが、少しでも嫌がればするつもりは一切なかったよ。貴方が嫌がる行為だけは、絶対しないって最初から決めていたからね」
喋りながら、寝室の中へ入り私の隣にゆっくり腰掛けた。
目を真っ直ぐに真剣に見つめている。
ちょっと目を逸らして重くならないように笑って今の気持ちを伝えてみた。
「カカシ君を意識したら、凄いね。こんなにもドキドキしてる。ふふっ」
自分の胸に手を置いて笑っていたら、いつになく低い声が聞こえる。
「花奏……ちゃんとオレを見なよ。」
「…えっ⁈…今…呼び捨て…えぇ?」
笑ってちょっと誤魔化しても、カカシ君は一切目を私から離さない。あまりに真剣過ぎて少し驚いたけど、私も大事な話かな、と真剣に見つめた。
「手…出して?」
「何で?どっち?」
「左手」
フワリと簡単に出した手を、
一瞬で重みに気づいてしまう。
「っ!…ちょっと待って…待って!」
カカシ君が、私の左手を両手で掴み、薬指にはめたプラチナの指輪の存在を、目をまん丸にして見つめていた。