第13章 初めての気持ち
少し長めのお風呂から上がり、頭にタオルを巻いてドアをゆっくり開けた。
手がずっと緊張してるし、喉も渇いてる。
冷蔵庫の方をわざとらしく見ながらカカシ君にもお風呂を入るように勧める。
今、私は本当に恥ずかしくて顔が赤い。
だから目を見て話せない。
「カカシ君も、どうぞ?」
出来るだけいつもどおりの声を出そうと心がけたのに、やっぱり緊張して声が少しだけ上がった。
スタスタ平然を装い、真っ直ぐ歩いて冷蔵庫に向かう。
お茶を冷蔵庫から取り出し、お気に入りの可愛いピンクのコップにお茶を入れる。
コポコポコポ……、
出しすぎてちょっと溢して、急いでタオルで机をササッと拭いた。
お茶をゴクゴクと飲み干し、また冷蔵庫に直すが、一向にカカシ君から返事が戻らない。
不思議に思い、パッと彼がいるソファへ目を向ければ、ずっとこちらを真剣に黙って見ていた。
その瞳は何かを決意したような、あの時と同じ鋭い視線で私を見つめている。
ド、ド、ド、ドと、心臓が驚き、
あの日の言葉と十三歳の彼を思い出す。
"あなたの初めてをオレに下さい。オレも初めてはこのみさんが良い。"
「カカシ君………」
「うん、入ってくる。」
「……うん………」
あまりに低い声に驚き、ビクっとなれば、カカシ君の瞳は少し隙が入り緩む。
「ごめん…花奏さん、今、そんな恐がらすつもりで見てたんじゃ無くて……。あーー、男のくせに…もー恥ずかしいよ。こんなに緊張するんだね、オレ、本気で余裕がないよ。」
「カカシ君、私も大人なのに…ごめん。余裕ない……。」
「ふふ、同じだね、花奏さん、大好きだよ、お風呂入ってくるね。」
「うん、いってらっしゃい。」
カカシ君は、恥ずかしそうに頬を染め、
私も、照れて顔が赤くなっている。
どっちも初めてだから、全部同じ気持ち。
カカシ君も恥ずかしいし、私も恥ずかしい。
そう思えば、気持ちが楽になった。
カカシ君はニッと柔らかく笑い、タオルと着替えを持って、脱衣所へ入って行った。