第11章 特別な誕生日
「花奏さん、手伝う。」
「え、いいよ、大丈夫だよ。」
「んー、じゃあコップとお箸、先に運ぶから。」
「…っ!あ、ありがとう。」
私のそばに来てスッと来て段取りよくしてくれるカカシ君。近くに来た時ニコッと軽く私に笑いかけてくれた。
たったそれだけ。
たったそれだけで、私は震え上がるほどゾクゾクと反応してしまう。
箸やコップを運ぶ後ろ姿を、気づかれないようにチラリと彼を見ていた。
彼はまた少し身長が伸びて筋肉がついた気がする。たくましく成長する彼はもう、私なんか追い越している。
このままいけば、百八十センチいくんじゃないか…そう私は未来の彼を想像していた。
今日はご飯、ハンバーグ、ナスの味噌汁、秋刀魚の塩焼き、お浸し、肉じゃが。
ハンバーグだけ私が好きな料理で、あとは全部彼が好きなメニュー。
あなたの為だけに作ったわけじゃないよ、そんな言い訳をした違和感があるハンバーグ。
私は、自分の誕生日なのに、まるで彼の誕生日のような料理を作ってしまう。
カカシ君は戻ってきて、さらに机に出来上がった料理を運ぼうとした時、硬直して口元をおさえ、ゆっくり息を吐いた。