第11章 特別な誕生日
午後六時半過ぎ、カカシ君はだいたいこの時間に来てくれる。
気配を感じてドアの前にいるが、ドアを開ける勇気がない。
コンコンコン…
ノックの音にビクッと反応して、ドアをゆっくり開ければ、十五歳の大人びた青年が目に飛び込んでくる。口布を今日も律儀に守り外してくれている。
「いら…しゃい。カカシ君。」
「花奏さん、こんばんは。」
声が上ずりちゃんと声が出せていない。それどころか、顔が赤く彼を真っ直ぐに見ることが出来ないでいる。彼の肩や胸などを見てドギマギしていた。
そんな私のマヌケな姿を見て、クスクス笑う柔らかな声が耳に入り、さらにじんわり汗が出てきて恥ずかしい。
「花奏さん、やだなぁ、普通にしてよ。オレおかしくて笑っちゃうでしょ?」
カカシに手で頬を優しく触れられば、瞬く間に身動きが取れなくて、縛られたように動けない。
カカシ君が頬の赤い私を間近でニッコリ笑って見つめている。
「ふふ、やっとオレの目を見てくれた。お邪魔します。花奏さん、今日いつも以上に可愛い、髪の毛切ったよね?」
「え?…あ、ああ、ちょっと美容室行って髪の毛切ってもらってきたんだ…。サッパリしたくて。」
「うん、可愛い、花奏さんに似合ってるよ。」
「そうかな、あ、ありがとう…あ、上がって?」
「うん、お邪魔します。」
そう言って、靴を脱いで丁寧に揃えて部屋の中に入っていつものソファに腰掛けた。
いつも通りのカカシ君。
何年も変わらない行動。
それなのに私は、その一つ一つのカカシ君の行動や仕草に敏感に反応していた。