第10章 十五歳 誕生日
真っ暗な部屋を見つめ、諦めた私はドアノブにプレゼントを引っかけて帰ろうと振り返る。
その瞬間、ストンッ!と目の前にカカシ君が飛んできた。
「…っ!カカシ君!お…お帰り。」
「はぁはぁ……やっぱりいた……」
任服は血塗れで、返り血を全身に浴びたような姿で少し中腰の姿勢で、膝に手を置き、全身で呼吸している。
それは、まるで全力疾走で、帰って来たように感じる姿だった。
「……ふぅーー、あー疲れた。花奏さん、やっぱり来てくれたんだね。ありがとう。」
「ごめんね?仕事だったんだよね。
プレゼントだけ渡したくて……。」
「入って?おいでよ、こんな夜道を
一人で返したくない。」
「いや、悪いよ、疲れてるだろうし、今日は帰るよ。」
「花奏さん、良いから。お願い、中に入って。」
見た目の返り血を浴びた姿とは正反対の、優しい声と穏やかに笑う表情に、思わずドキッとしてしまう。
カカシ君が鍵を開け、ドアを持って中に入るのをずっと待っていたから、私はうっかり中に入ってしまう。
「お邪魔します。」
「適当に座って。オレ、シャワーを浴びてくるから。それまで待っててね。花奏さん。」
まったく気にせずに平然と歩いて脱衣所へカカシ君は向かって行った。
また彼は身長が伸びていた。少し体型に引き締まった筋肉がさらに付いた気がする。
もうカカシ君は、七歳の少年の面影が無くなってしまったように感じる。
彼はまた一段、大人への階段を上っていった。