第10章 十五歳 誕生日
今 カカシ君の家の前にいる。
時間は午後八時過ぎ
十五歳
カカシ君の誕生日だ。
彼の為に選んだ誕生日プレゼントは、男性用のシルバーの控えめなネックレス。
身につけてくれるか甚だ疑問だが、彼に似合うと信じて購入した。
プレゼントを紙袋にいれて、カカシ君が一人きりで暮らす家に、私は今年も懲りずに来てしまう。
特別な今年、来てはいけないと頭では理解していた。
それなのに、どうしても、十五歳をお祝いしたい、という自己満足で身勝手な心がむき出しになる。
カカシ君が言う、覚悟や準備が全く何も出来ていないまま、月日だけが過ぎていき、私はここに立っている。
今日は朝から任務で里に戻った時、すでに夕方を回り、私は全身汗だくだった。
一度アパートに帰宅し、シャワーを浴びてサッパリして夕食を食べ、現在に至る。
真っ暗闇の家を確認し、この家に今、人気が一切無い事が分かり、ある事に確証を持つ。
それは、カカシ君が誕生日に対して一切、特別に感じていない何よりの証拠だった。
昔から彼は自分の誕生日をあまり喜んでいない。むしろ嫌がった姿を私に見せつけていた。
私の誕生日は自分のように喜ぶ彼が、自らの誕生日は、平日と変わらない生活をする。カカシ君はむしろ嫌悪感を抱いて、その日を過ごし生きていた。
一度その理由を聞いた事がある。
「いくら歳を重ねても、大人にならない。だから好きじゃない、意味がない。」
カカシ君が吐き捨てるように喋った言葉は、
早く大人になれない事への苛立ちだった。