第5章 十二歳
コンコンコン……
以前のように、ドアを今も遠慮がちにノックする音は変わらない。
あれから五年が経ち、カカシ君は十二歳に、私は二十二歳独身一人暮らし彼氏無し。このままだと一生独身なんじゃないだろうか、心配になる。
カカシ君がいるからではない。告白を今まで何度かされてきたが全てバッサリお断りをしている。
あんまり付き合う事やら恋愛に興味がなく、そんな事をする時間があるならば、カカシ君の修行をみてあげたい、とつい彼を優先してしまう。
彼はやはり才能が溢れている。サクモ先生の最愛の息子は、私の力を遥かに超えている。天才を絵に描いたような人とは、正に彼だと確信している。
「鍵空いてるよーー!入って大丈夫ー!」
私はちょうど、唐揚げを揚げてる最中だから手が離せなくて、少し大きめの声を玄関に聞こえるように喋る。
ドアがゆっくり開いて、十二歳の目つきがちょっとキツい生意気な男の子が入ってくる。それでも可愛さは変わらない。
口元は相変わらずチャーミングなホクロが可愛いくて、カカシ君はやっぱり不満気でドアを閉めながら大きな溜息をつく。
「まだ口布外さないとダメ?もういい加減やめにしましょーよ。オレは十二歳ですよ?もうガキじゃないんだから。」
プンスカしながら「お邪魔します」と言い靴を丁寧に脱いで真っ直ぐいつもの定位置のソファに腰掛ける。
「当たり前でしょ?ここでは私のルールに従ってもらわないと!ルールや掟は守ってもらわないと!ね?」
「ルールも掟も全部花奏さんが好き勝手に決めた事でしょ!」
「そうよ、なんか文句あるわけ?」
ギロリとカカシ君を威圧的に見るが、全然応えなくなった。昔は可愛かったのになーと思いながら彼を見ていれば、返事は素直に返ってきた。