第19章 二十六歳
あれから月日が流れ、
今日は、忍術学校、アカデミーの入学式の日。
忍を目指す子供達が、学問、体術、幻術、忍術をこの学校で学ぶ。私もカカシ君もここの卒業生だ。
そして今日は、私達は保護者として式に出席する。
暖かい日差しが眩しく、春うららのこの季節、雲一つない爽快な青空が広がり、絶好の行楽日和。
築八年の二階建て一軒家。庭付きで最近キュウリやトマトを栽培し、玄関の前にあるポストの表札には、「はたけ」と苗字が書かれ、中からは忙しなく準備する声が聞こえる。
「花奏さん、カメラは持った?」
玄関で靴を履いているカカシ君が、大事な物を持っていない事に気づいて声をかける。
カカシ君のとなりにいる小さい子は、本日主役の次男君。自分の靴も履き、準備万端で、いつでも出発出来る状態で、私を苛々して待っている。
「あ!忘れてるわ、ごめん、取りに行ってくる!」
靴を急いでぬいで、リビングの食卓に置きっ放しの、一眼レフカメラを持って戻れば、小さな五歳次男坊から早速クレームを受ける。
「母さん何してるのよ。机に準備して忘れてるなんて、ホント鈍臭いなぁ」
「あはは、ごめんごめん、慌ててたら忘れちゃってーー、て、親に向かって何て言い方なの!」
へーんだ!と、私が叱っても全然応えない、あー自分の息子ながら、可愛くない。
だけど見た目はとっても愛くるしい姿をしている。
カカシ君をそのままミニチュアにしたようなそっくりな見た目で、よく街でも声をかけられ人気者だ。
だがしかーし!中身はカカシ君に更に輪をかけたような生意気なガキンチョだ。今からトラブルメーカーにならないか、既に心配でもある。
するとパパのカカシ君から助言が入る。
「ダメだろ?鈍臭いは言い過ぎでしょ?せめて、おっちょこちょい、とか、もうちょっと柔らかく言わないと。」
「違う!カカシ君、そこは叱るとこでしょ!」
あれ?そうだっけ、ハハハハ……ってカカシ君、笑って誤魔化してるけど、やっぱりカカシ君の息子だ。小生意気な奴らめ。
「よしちゃんと持ったよ。さあ、行こう」
そう私が言い、家の扉を開けて、三人は歩いてアカデミーへ向かった。私の左手、薬指にはキラリと控えめに光る指環が二つ重ねて付けている。カカシ君もあのシルバーのネックレス、そして指環を付けてくれている。