第9章 きもちわるい
「……そうだな、傷の深さから言っても、生き残れる可能性はかなり低い」
「でも、ずっと引っ掛かってるんです……。
私、その時、ロープで…、そうしたんです。
だから、縫い目というか、この傷には違和感があるんです」
「だろうな。
素人で自分で殺るのに、わざわざそんな大掛かりな首はねなんて、出来るわけがない」
先生は少し考えてから、更に憶測を付け足した。
「は、本当に無個性だったのか。
それと、その身体は、のかどうか」
「……え?身体が、違う…?」
「もしかしたら、だがな」
「………」
急に、自分が気持ち悪くなる。立てないほどの吐き気。
「うっ……」
「悪い、今する話じゃなかった」
踞ったところを先生は優しく背中を撫でてくれた。
凄く、混乱してるし、きもちわるい。
誰のかもわからない身体で生活しているかもしれない?
食べたり消化してる器官とか、呼吸してる器官とか、こうして今、吐きそうになってる内臓とかも、もしかしたら私のじゃないかもしれない。
先生との、そういうコトも、感じたり気持ちよくなったりしてるのは……。
他人と融合して生活しているかもしれない。
それは、例え同性でも、凄く気持ちが悪い。
もしかしたら、記憶が操作されているだけで、私の元の身体は男性かもしれない。
脳は、私のままだから、それはない………といいけど…。
「…っ、せんせ、どうしよう、こわい…」
「大丈夫だ」