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【ヒロアカ】コスミックロジカル【裏】

第51章 【飯田編】吸血鬼


気付かないうちにそれは起きていた。
己の唇で、彼女の柔らかそうなそれを塞ぐ。
慣れないせいで少し歯が当たる。
止めなくては、とどこかでは思っているのに、次は気を付けようと違う自分が動く。
口を先程よりも開き、彼女に当たらないように角度を変える。
「…っ!!?」
驚いてバラバラと教科書やノートが床に散らばる音が微かに聞こえる。
そのくらい夢中だったかもしれない。
入浴後の石鹸の香り。
混ざる女子特有の甘い花のような香り。
人間特有のにおい。
唾液がくちゃ、と粘着性のある音。
何もかもが興奮する材料でしかない。

「い…だ、くん…やめ…っ、ふ…」
反らした唇からそんな言葉が漏れる。
少し湿った髪に触れ、胸元を押し返され、その時にやっと犯してしまった事実に気付く。
「っ!す、すまない…!!」
「…ん…」
その小柄な身体に、慌てて落とさせてしまった荷物を拾い渡した。
「その……」
「ご、ごめんね…私、飯田くんとは…」
「……ああ」
わかっている。
例え赦されない関係だとしても、彼女にとっての最大の幸せを自分は知っている。
槍に貫かれるより痛いその言葉を、そっと落とし込む。

ただ、衝動を突き動かす原因もまた、その男だという事実もある。
彼女の白い肌につけられた、痛々しい噛み痕。
なんとなく、1ヶ所ではないと。
「ちゃんと、優しくされてるか?」
その言葉に、彼女は顔を一気に赤らめ、身体を慌てて手荷物で隠した。
「だっ!大丈夫…!!!」
余計な心配だったことに少し安堵する。
「今日、ほんと、ありがと!!おやすみ!!」
「ああ、おやすみ」
逃げるように部屋に入る彼女を見送り、自分は深いため息を吐いてから部屋へと戻った。
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