第51章 【飯田編】吸血鬼
例えばだが、彼女は特段に美しいわけでもなく、上半身の女性の象徴も大きいわけではない。
クラス内だったら八百万などが代表的に性の象徴として印象深いかもしれない。
(いかん、これではセクハラだ)
襟を正すように考えを改める。
それにしても目の前にいる少女は、同じ年だとしたら些か幼く見える。
体格差の問題もあるだろうし、そして、彼女の人相もまた幼く見させるのであろう。
しかしそれとはまた裏腹に、とてつもなく引き込まれる色気というものを感じる。
一人の男の寵愛を一心不乱に受ける、というだけでここまで違うのだろうか。
「飯田くん…どうしたの?」
彼女の声で漸く我に返る。
夜遅くまでテスト勉強に付き合わせてしまった故に、彼女の部屋の前まで送り届けた。
「いや…」
言葉を濁し、さっきまで考えていたセクハラ紛いなことをなんとか消そうとする。
彼女は色っぽく笑った。
…ぽく、というよりかは、全てのさり気ない仕草がどこか、色香があり、じわじわと自身の何かをぐらつかせる。
「宿題、おかげですぐ終わって助かったよ。
ありがとう」
彼女が言い終わるのが早いか自分が速いか、わからなかった。