第50章 【番外編】忍び忍ばず
普通科に顔を出してみたが、はいなかった。
部屋にも寄ってみたが、きちんと支度をして出た様子だった。
保健室にも来ていないらしい。
担任には今のところ全ての授業に出席していると言われた。
こんなにもたまたま会えないことがあるのだろうか?
昼休みも、いつもの空き教室にいたが、結局来なかった。
学食の前を通ると、彼女の好物メニュー。
しまった、と思い、普段通らないせいか生徒たちに不審な目を向けられる。
会えなければ会えないほど、不思議と欲しくなる。
焦燥が苛立ちになっていく。
深夜、持ち帰りの仕事が終わってから警備の目を抜けて部屋を訪れた。
いつもは勉強している時間だが、ベッドの中ですやすやと寝息を立てている。
苛立っていたはずだが、顔を見た瞬間、長いまつげが深い眠りで上を向いているのがわかった瞬間、安心感のようなものが涌き出た。
明日また会えばいい。
頬に触れるだけのキスをし、自室へと帰った。