第50章 【番外編】忍び忍ばず
洗い立ての髪から滴が流れる。
面倒でしばらく切っていなかった。
乾かすのもまた更に面倒でそのままゴムで束ね、毛先を無理やり上にやり、濡れないようにする。
連休前だと言うのに、狂った敵が暴れてくれたお陰でぐったりとしてしまった。
年のせいにはしたくないが、体力の衰えを感じずにはいられない。
何もなく、珍しく彼女のいた気配もない部屋。
帰りが遅いと、たまにさりげない夜食が置いてあったりするが、今日はそれすらもない。
特にメッセージも来ていない。
何故なのか。
こちらから連絡するのも負けた気がしてしまい、そのままスリープモードにした。
何故だろう。
こういう時ほど、その存在が欲しくなるのは。
随分自分の身勝手さに鼻で笑ってしまった。
普段あれだけ突き放し、なるべく素っ気ない接し方をしているというのに。
連休は出動が多くなるかもしれない。
それでも1日くらいは、ゆっくり二人で過ごそう。
自分ではありえない考えに驚いた。
他人に無駄な時間を使う、そんなことをしたことはあっただろうか。
明日、何もなければ、彼女のしたいことを聞こう。
きっと驚いた顔をしてから、先生とならなんでもいい、といういつもの答えが返ってくるに決まっている。