第44章 【番外編】薫
死刑囚の面会室は随分と地下にある。
ここ最近の彼女の様態を聞くのは今回がラストチャンスになるだろう。
ここからは自分で探るしかない。
「それで、聞きたいのは?」
「彼女の血液だ」
「ああ、ギリギリしか入れてないから完全に血虚の状態だよね。
自分で作れるようになるまでもう少しかかるよ」
「いずれは治るのか?」
「前より動けるはずだよ、試してみて欲しい」
「……なるほど」
「そうだ、研究所がまだあるならそこに個性のマニュアルがあったから…、それを見れば大体の死体のことはわかるよ」
「死体って言うんじゃねえ……」
「随分と気に入ってるね……彼女を」
「面倒は最後までみる、飼い主の責任だ」
ガラス越しに奴は一瞬笑う。
「それだけならいいけど」
特殊すぎる個性のせいで毎日頭を抱えることでいっぱいだ。
スペシャリストはもうじきこの世からいなくなる。
面会時間に限りがあるのは残念だ。
聞きたいことの山は相変わらずそのまま。
「時間です」
「チッ……」
「あ、そうだ、最後に」
「なんだ今さら」
「贈り物みたいなものさ。
世界三大美女のクレオパトラは、ローズオイルを愛用してたって、知ってる?」
「……なんの関係があるんだ?」
「イレイザーヘッド、時間です」
忌々しい顔がまたガラス越しに歪む。
「もうすぐクリスマスだし、君への贈り物だよ。
勘違いしないでよ、君への、だ」