第40章 【番外編】不安
「あー、お礼出来なかったなぁ…」
「いいだろ、次で」
少しイライラしたような物言いだ。
は気付いたのか顔を見てくる。
「先生、どうしたんですか?」
「いや」
誤魔化すように言ってしまった為、彼女の視線から逃げるようにベッドの定位置へ腰掛けた。
何故自分がこんなに馬鹿らしいことをしているのか。
はあ、とらしからぬ溜め息が出る。
「先生?」
「なんだ」
「補習は?」
「ああ」
「体調悪いですか?」
覗きこむように見てくる柔らかい表情を両手でずぶりと潰した。
「ぷふぅ!?」
「体調が悪いわけじゃねえ」
「むー…ぢゅう、ぬんで……」
「なんでもない」
柔らかく張りのある頬は触る度に形が変わり、ふと粘土工作を思い出した。
そんな風にしていると、段々と怒りが静かにおさまっていく。
「じゃぁ、じゃあ、先生…」
下から見上げてくるは、妙にいつも色気がある。
男として根底にあるものをいつも擽られる。
自然と目を細め、生唾を呑み込む。
赤らめた頬と、言いにくそうな言葉が引っかかる。
言わせたい気持ちと急いてしまう自分がいた。
「早く言え」
口元が歪みそうになるのを耐え、緩やかに急かしてみる。
は、すみません、と小さく謝ると、自分の隣から突然姿を消し、玄関をあけて出ていった。
「…は?」