第40章 【番外編】不安
一人部屋に残され、虚しく情けない声が木霊した。
何分かしてが戻ってきた。
そして電気を消される。
手には、何かを持っている。
「し、失敗しちゃったから、悩んだんですけど、やっぱり、食べてもらいたくて…」
「……」
「先生、お誕生日おめでとうございます…!」
ろうそくに火が灯ると同時に、も華が咲いたように笑顔になった。
そこには、歪な小さなケーキ。
そういえば、そんな日だった。
言われるまで忘れていた。
ボーッとしていると、火を消すように促される。
こんな年にもなって、柄でもないし、若干照れ臭い。
「先生!ほらほら!お願い事して!」
「……」
10秒ほど消す決心をして、よくわからないジンクスに乗っ取って願い事を唱え、ふっと息を吹き掛けた。
部屋が一気に暗くなる。
「わあー!おめでとうございます!」
拍手しながらははしゃいだ。
「実は飯田くんが教えてくれて…!
色々悩んだんですけど、やっぱり、お祝いしたいなあって…!
先生、大丈夫ですか?迷惑、でした?」
何も言わない俺に不安を感じたのか、彼女は心配して声を掛けた。
「せん……」
延々と聞いてくるその柔らかな唇を、自分のそれで塞ぎ、空間に静寂が戻った。
「……うるさい」
「……っ」
電気が付いていなくてよかったかもしれない。
自分の今の顔を、見られるわけにはいかない。