第40章 【番外編】不安
それは時折くる不安ともいうべきか。
迷った末に口にはしなかった。
それは彼女を一個人のとして、否定とも捉えかねない物の考え方だったからだ。
彼女の部屋に飯田が訪れて以来、二人は多少仲良くなった。
世話好きの彼のことだろう、転校生で孤立している存在のが心配なのはわかる。
あまり深入りされると、轟の二の舞になりかねない。
その不安と。
それから、彼女の警戒心の無さ。
「……」
「あ!先生!」
「すみません、お邪魔してました」
「……」
「今日の宿題見てもらったんで終わりました!
飯田くんありがとう!」
「…い、いやこのぐらいは…」
躊躇いもなく奴を睨んでしまう。
それに気付いたのか慌てて帰ろうとしている。
「帰っちゃうの?」
「あ、ああ、うん、そうだな」
「そう…、お菓子一緒に食べようと思ってたのに…」
「気にしないでくれ」
そそくさと靴を履き、逃げるように帰るその優等生の後ろ姿を睨み付けた。