第30章 【番外編】熱い
なんの躊躇もなく、その開きっぱなしの口を塞いで奪う。
「!!!」
驚いたように顔を上げ、離れようともがく。
「せ、せんせ、風邪だったら、うつっちゃうから……!」
「うつせ。
薬の効かない身体より、こっちにうつした方がまだいい」
「…っ、だ、だめ……、ん…っ」
否定してくるその唇を、押し倒しながらまたしても塞ぐ。
相変わらず受け答えも下手くそなその仕草が、どことなく可愛いと思ってしまう。
何年この仕事をして、何人もの生徒を受け持ったというのに。
何故、罪悪感より簡単に流されてしまうんだろうか。
後ろめたさがないわけではない。
それでも、この一人に流され、そして濁流へと飲まれるような。
この感覚には簡単には逆らえまい。