第30章 【番外編】熱い
「保健室には行ったのか?」
「……無理…」
「寄るついでに、水分と食べ物もついでに持ってこよう」
「待って…、ここに、いて欲しいです…」
細い指先が助けを請うように服に絡まり、潤んだ瞳が見上げてくる。
なんとなく、それに逆らうことが出来ずに、大人しくいつもの定位置に座り、額に再び手を伸ばした。
すっかり熱を持ってしまった首回り、後頭部へと這わすと、気持ち良さげに目を細めた。
「解熱剤くらいは、あってもいいのではないか?」
「効くか、わからない…」
今までも何度か、処方された薬を飲んだらしいが、あまり効果がなかったという。
特殊な一度土に還ろうとした身では、なかなか今まで通りとはいかないだろう。
「炎症とか起こすのか?」
「知らないですよ…」
「口開けろ」
従順に開く口から中を少し覗くと、特に違和感はない。
耳の下から輪郭にかけて触ってみるも、腫れている印象はない。
すぐに下がる熱だといいが。