第30章 【番外編】熱い
「おい、いつまで寝てる…」
「せんせぇ……」
その子猫のような少女は震えていた。
ここ最近の寒暖差にやられたようだ。
「朝から、熱が…、下がらなくって……」
授業が全て欠席になっていると聞いたのは昼過ぎだった。
保護者だから様子を見てこい、と他の教員に言われ、渋々来たわけだが、数メートル動くのも苦難なレベルらしい。
額に手を乗せると、確かに指先がちりちりするほど熱い。
「結構高いな…」
「うう……薬も効く体質じゃないし、参ってて……」
来てくれてよかった、と彼女は小さく言った。
「先生の手、冷たくて気持ちいい……」
少しでも和らぐよう、額を掌全体で覆い、横になるよう促した。
日没がもうすぐかのように、部屋には光が僅かに差し込む。
ずっと待っていたかのように、朝から時が止まっている部屋で、何もせずにいたようだ。
飼い主を待つ動物、ではなく、これではむしろ植物に近い。