第28章 【轟編】秘密
漸くベッドに横にし、点滴と輸血パックが早々に用意される。
ただ、それを、パイプ椅子に座って眺めていた。
「……は、どっかおかしいのか?」
「まあ、普通じゃないねぇ」
「……普通じゃない?」
「患者のセンシティブな情報だよ、教えられないね」
「……」
「早く処置してあげたいけど、こればっかりは厳しいね。
研究所でも通さないと」
「……」
そんなにか…と。
かなりの重病ではないのかと一瞬疑った。
それでも、その個性が欲しいと、敵は狙っている。
彼女からは個性の抽出は不可能だと後から誰かに聞いた。
不憫な奴だと、改めて思った。
その身体で、その個性で、そして、耐えきれないほどのデカい秘密。
先生は、それをどのくらい知っているんだろうか。
あの時、彼女は確かに、明らかに血縁者ではありえない顔で俺を見ていた。
それは、親愛より更に深いもの。
鈍感だと言われるが、あんな間近で見ればすぐにわかる。
先生は、どのくらい知っててどのくらい理解して、彼女と接しているんだろうか。
何故か、自分のことではないはずなのに、モヤモヤした。