第25章 かさかさ
それを見て思った。
生きてるから、しんどいのだと。
こっそり見つけた抜け道から走って森を出た。
少し外れは、すぐに目的地の樹海。
「可哀想に」
真っ白な髪と肌は、そう言う。
前にも誰かに言われた。
なんでそんなこと言うのかと不思議に思った。
「今すぐ、楽にしてあげるから」
「あっ……」
首筋にちくりと何か射して、中に何か入ってくる。
注射器?
毎日されてたから、すぐにわかる。
からだ、あつい。
「個性をブーストさせるものだから。
ちょっと、変な感じするかもね?」
頬に何か触れる。
爪研ぎのように思えた。
唇、だろうか。
「さあ、沢山流して。
君の涙。
妲己、玉藻前、数々の人間を魅了し、苦しめ、洗脳した、九尾狐の涙」
「きつね……?」
「……妖怪、仙女、そんな説もある」
「あ……、わたし、ヒトじゃない…?」
「個性さ。人間なのは変わらない。
ただ、同じ個性というだけ」
「……よく、わからない」
「最大値まできたね」
他の管が私に刺さる。
やっと、この忌々しい能力から解放される。
「あっ……」
身体、変だ。熱い。疼く。
太腿を擦り合わせてしまう。
下着が、水音をたてる。
「ちょっと強めだから…。
死ぬとき、気持ちいい方がいいだろう?」
「……は、ぁ…」
機械の動く音がした。
さよなら、私の個性。
さよなら、先生。
首に宛がわれた手に、ゆっくり力が入った。