第23章 ひどい
気分はすっかり温泉旅行だ。
「あさぶろあさぶろー!」
と意味不明な歌を口ずさみ、横で呆れている先生を連れて、浴場にたどり着いた。
「では、またあとで」
と挨拶したのに、先生は同じ部屋に入ってきた。
「先生、自分が無職になるって散々言っておいてそれはないんじゃないですか?」
ちょっと怒りながらその顔を見た。
「故障の貼り紙がしてある」
指をさされ、見に行くと、ペラ紙にそのように書かれて貼ってある。
先生や生徒が極端に少ない今のうちに、修理点検を行っているらしい。
「じゃあ、先生おさきどうぞ!
私その間に…」
「今更だろ」
「………」
避けようとしているのがバレてしまい、あっさり捕まる。
「っ、!」
普段と全く雰囲気が違うから、いつもより緊張してしまう。
反響してしまう声とか、明るいせいで見えてしまっていることとか。
全然、違うから…。
ぬるぬるとするのは石鹸のせいだと、思いたい。
肌をじっくり触られて、手のひらの感触を覚えてしまいそう。
「あああっ」
「洗っているだけだが?」
「ぜ、ぜったぃ、ちがう…っ」