第20章 くる
校外授業は、職業体験だった。
ヒーロー社会になったところで、新たに作られた職というテーマだ。
私は個性がないことになっているので、残っていた清掃会社に行くことになっている。
「瓦礫はこっちのバケツに入れて下さい。
これをあとで損害保険でいくら出るのか計算するので。
別途、ゴミや塵はこっちに捨ててください」
結構な暴れっぷりだったらしく、ビル一つが大分傷ついていた。
言われた通りに分別しながら片付けていく。
同じ班の子は、別でやっているようだ。
担任の先生がなんとか私の近くにいるが、先生に言われた通り、油断しないようにした。
交通規制が解除されたのか、私のところに人が歩くようになる。
一気に人混みが押し寄せる。
気を付けなきゃ、と思った瞬間にはもう遅くて、白い髪の細い男の人が、私を見て笑っている。
(……あ……)
全身の鳥肌が立って、ここにいるのは危ないと、直感が訴えかけてくる。
逃げなきゃ。
踵を返して走ろうとしたのに、その人はもう横にいる。