第20章 くる
「逃げられないよ」
「!!」
「怖い?怖いよね、ごめんね。
君の力がどうしても見たくて」
「……っ!!」
「ほら、発動してよ、どうしたら見れるの?」
声も出せない。
でも、なんとか、出来ないって、伝えなきゃって思った。
首を横に振る。
気に入らなかったらしく、首に、乾燥した手を宛てられる。
「……っ!!!」
「その継ぎ目から裂いて、内臓を一つずつ取り出すよ?」
「ぁ、ち……っ、ぁ」
「なに?よく聞こえないんだけど」
「つ、つかぇ………い」
漸く振り絞った声が届いたか不安だ。
怖くて、震えて、今にも泣きそうだ。
「あ、使い方を知らないの?
あの死体愛好家は教えてくれなかったの?」
彼は残念そうに眉を下げる。
そして、またその不気味な笑顔を私に向ける。
「君、願い事はある?
叶えたい夢とか、願望。
誰かを殺したいとか、そういう気持ち」
「な、ない……」
「君は、全部叶えられるよ。
凄い力なんだ、だから、どうしても、欲しくてね?」
首から手がすっと離れる。
力の入らない脚から崩れ落ちていく。
「っ、は…っ」
「泣くかい?」
「……」
理解が出来なくて、またその脆そうな顔を見上げた。
でも、怖い。
人のことなんて言えたものじゃないけど、生きている人に感じない。