第1章 はじまり
『(人魚の読み書きに使う文字
でいいのかしら?)』
ユンギ「……」
俯いて考えていると、ユンギがペンを
手に取り、紙に何やら書いた
ユンギ「これが「あ」次は「い」その隣が
「う」次が「え」最後が「お」だ。」
『(私が使っていた文字と同じ!)』
ユンギが教えてくれた事に頷いた
ユンギ「真似して書いてみろ」
差し出された紙にはスラスラと
『字は書けます』と書いた
があまりにスラスラ書いたので
驚いたユンギが覗き込む
ユンギ「書けたのか…
じゃあ自分の名前、そこに書いてみろよ」
先程、書いた文字の一段下に自分の名前
を丁寧に書き終えユンギの方に紙を向けて
見やすいようにして渡した
ユンギ「………」
は頷きながら微笑んだ
ユンギ「そうか、……」
もう一度ぽつりと小さな声で自分の名前
を言うユンギに胸の底が温かくなった
変わらず無表情のユンギだが、心做しか
少し雰囲気が嬉しそうだった。
ユンギ「字も書けたとこだ。、
お前に今から、いくつか質問をする。
嘘はつくな。正直に答えろ。いいな?」
は頭を縦に振れば
そこから質問の嵐だった
ユンギ「お前は、何処から来た」
『(海から来ました。なんて
書けないし、どうしよう……)』
精一杯の回答を書いてユンギに紙を見せた
ユンギ「分からない…?」
『(嘘だと分かったのかしら…)』
ユンギ「歳はいくつだ?」
『(人間って何歳まで生きるんだろ)』
一番、分からない質問をされてしまった
は人魚。何百年も生きているのだ
ユンギ「…また、分からないのか。
記憶喪失ってとこか……」
『(また、知らない言葉…)』
紙に『記憶喪失って?』と書いて
また、ユンギに渡した
ユンギ「一部の記憶が思い出せなかったり
物事に対して強い思いがある事だけを
忘れたり…色々だ。まぁ思い出せる奴
も中にはいるらしいが…」
『(もしかして、記憶喪失って
ことになってるの!?)』
ユンギ「俺は医者じゃないから
はっきりとは分からない。明日の夜に
医者が来るらしい。それまで休め」