第2章 水色~黒子~
あの頃とは、もう違う。
そう思った。
思えたところに、美由だけが、いつまでも私の前に影を落とす。
「今度は何がしたいの。しつこくされんの、いい加減うんざりなんだけど」
「何でそんな言い方すんの!?全部私が悪いみたいじゃん!私だって、あの頃すごく悩んだんだから!」
「悩んだから何?『私は○○の友達だからね』とか言っといて、みんなと一緒に私のこと無視して笑ってたくせに!」
小学校で知り合って友達になってから、中学のあの時まで、私は美由を一番の友達だと思ってた。
なのに……。
先輩が怖くて…っていうのは、頭では分かってる。
だけど許せない。
一番信じてた友達だったからこそ、私は美由が一番憎かった。
それを、自分だって悩んだんだから…とかさ。
(被害者ぶらないでよ!)
腹が立って、許せなくて、握った手がかたかた震えた。
「ふざけんなっ!」
ばんっ!
私は思いきり、カウンターに両手を叩きつけた。
その時、静かにドアが開いて。
そのまま固まる私の前に現れたのは黒子くん、だった。
「もう昼休みも終わってしまいますが、僕も当番ですから」
昼休みはカントクに呼ばれて遅くなってしまいました、という彼は、いつもと変わらない表情をしている…ように見える。
だけど、今までの声は外にも聞こえてただろうし、中で何があったかも、カウンターに両手をついたまま止まってる私を見れば、大体想像がつくと思う。
黒子くんは、勘も良いし……。
さすがに、ここまで美由が仕組んだとは思えないけど。
それにしても、すごいタイミングだな、って、私は苦笑いするしかなかった。
美由のことは、もうどうでも良い気持ちになってたし、実際、言いたいことはぶちまけた。
黒子くんのことは…まだ私の中では整理できてなかったけど、この状況を見れば、そんな必要もなさそうな気がした。
(だって普通、引くよね……)
口が悪くて、怒鳴り散らして、毒吐いてる女の子なんて見たら、思いっきり引くに決まってる。
ぐるぐるしながら、私が黒子くんから距離を置く必要なんかない。
そんなことしなくても、きっと黒子くんの方から離れていくだろうし。
これって、全部片付いた、っていうか、終わったってことになるのかな。
全然すっきりなんて、しないけど。