第2章 水色~黒子~
「最初に先輩にいじめられた時、あんたを信用して相談したのに、次の日になったら全部先輩に知られてた。そのうち同じ学年の子にも嫌がらせされて、その中には、しっかりあんたも入ってたっけね」
「違う!私だって、本当はあんなことしたくなかった。けど、そうしないと今度は私が……」
「はあ!?」
だから、何?
しょうがなかったとか、今更、そういう言い訳?
先輩の言うとおりにしなきゃ、今度は自分がいじめられるなんて、そんなことは私だって知ってたけど。
それを今更私に言って、何になるっていうんだろう?
大体、私と話した内容まで先輩に売って、その後には他の子達と一緒になって、笑いながら私を見てたくせに。
そんな言い訳、通じると思ってんの?
でも私がバスケ部をやめた途端、私へのいじめはぴたりとやんだ(その後、また別の子が標的にされたとか聞いたけど、詳しくは知らない)。
自分へのいじめがなくなった。
それはすごく嬉しいことだったけど。
でも中学を卒業した後、街で偶然『あの連中』の誰かと再会したり、すれ違ったりするだけで、私は意識せずにいられなかったのに、向こうは全然そうじゃなかったことに、愕然とした。
それこそ何でもなさそうに、今でも普通の友達みたいに話しかけてきたり(もちろん今では付き合ってなんかいないけど)、そもそも私のことなんて、まるで覚えてなかったり。
反応は様々だったけど、共通してるのは、いじめた側の人間は、そんなこと簡単に忘れてしまうらしい、ってことだった。
忘れたのか、それとも、あの人達にとっては何もかも単なる遊びの一部で、いちいち記憶するまでもない事だったのか。
そんなこと、私には…分からない。
問い質して確かめる勇気もなかったし、今更蒸し返して何が変わるわけでもなかったから。
だから中学の時の自分には、本当に『友達』と呼べる人はいなかったんだって、そう思うことで自分を納得させるしかなかった。
昔を引き摺っていても、どうしようもない。
高校に入ったら、今度はそんなことにならないように。
『友達』だって思える人と出会えますように、って祈るような気持ちで。
ちゃんと『友達』になれるように、私も頑張ろうって思った。
そして今、私には『友達』がいる。
『バスケ部』って言葉にトラウマもあったけど、今では楽しいと思えるようになった『バスケ部』に入部もした。