第3章 青色~青峰~
「ゃ…っ、あおみ……」
「………き、なんだよ」
「………?」
「……ガキの頃から、ずっと…お前が好きだったんだよっ」
「……っ、ぇ」
どきどきする、とか、驚くとか、何だか、そういう感覚が全部抜け落ちちゃったみたいに、私は固まった。
すごく、ものすごくびっくりして…何が起きてるのか分かんないくらいに頭が上手く働かない。
びっくりしすぎると、人間て、こんな風になっちゃうものなのかな。
なんて、今は関係ないようなことばっかり考えちゃったりするのって、現実逃避ってやつ、なのかな……。
だって…わけわかんないよ?
何で…どうして?
青峰くんが、そんなこと……。
最初はただただびっくりして、固まって。
何にも考えられなくて、動けなかった私…だけど……。
だけど、何か…何だか……。
どきどき…してきて……。
(やだ…何で……!?)
仲良しだったのなんて、もうずっとずっと前の短い間で、ただの小学生で……。
それなのに。
『ガキの頃から、ずっと……』
ずっと、って何?
そんなの知らない!
あの時から、まともに喋ったことだってなくなってたのに。
なのに『ずっと』なんて。
(変だよ、おかしいよ!)
こんなこと言いだす青峰くんも、それにどきどきしちゃってる私も……。
(私は…私は、青峰くんなんて……)
そうだよ。
私は、こんな人……っ。
「も…っ、やだ。ふざけな……」
「ふざけてなんかねえ」
突っぱねようとする私に、青峰くんは静かに言った。
私の頭の真上で、怒鳴るでも、苛々した感じでもなくて。
ただ静かで、真っ直ぐで。
それが余計、いつもの青峰くんと違ってて。
「~~~~~っ」
言い返す言葉も思いつかなくて。
どうしたら良いか分かんない。
怒鳴るとか、声を荒げるとか、いっそ押さえつけるみたいな言い方された方が、私だって逆らえるのに。
突っぱねられるのに。
何で今日は違うの?
何で…何で?
どうして青峰くんにどきどきして、心臓が壊れそうになってるの、私!?
「あおみ…ね、く……っ」
どきどきしすぎて、膝が震えてる。
どうしよう、こんなの……。
またバカにされたら、悔しい。
それなのに、膝が勝手に震えて動けない。
それがまた、すごく悔しいような、情けない気持ちになった。