第2章 水色~黒子~
『白紙』…でした。
「やった! 何にも書いてねえ! 俺のクジ運、完璧!」
何が完璧なのか知りませんが、何の委員にも当たらなかったことに、鈴木くんは大満足のようです。
「見ろよ、黒子!」
『見ろ』も何も、とっくに分かってます。
でも、さすがにそうは言えないので。
「良かったですね」
適当に答えた僕の手には……。
『図書委員』
そこにある文字をもう一度見下ろしながら、僕は自分が図書委員になったことをクラス委員に報告しました。
それから…△△さんにも。
「△△さん。よろしくお願いします」
「あ、は、はいっ。こちらこそ、お願いします!」
挨拶した僕に、△△さんは、びくっ、として(これにはちょっと傷つきました)。
それから、思い切り『緊張してます』という顔で、だけどちゃんと返事をしてくれました。
ぺこ、と頭を下げる仕草も、緊張した感じも可愛いですが。
(初対面だと思ってます…よね)
入学して間もない時期、同じ中学出身の友達を除いてみんなが初対面というのは誰もが同じことです。
まして、△△さんは人見知りだったりするので、そういう点では他の人より緊張度も高いだろうと、簡単に想像できます。
でも△△さんは、新しい場所で頑張ろうとしている。
緊張しながら、それでも僕に返事をしてくれたのもその一つなのだろうと思うと、何となく嬉しくて、その姿勢が眩しく見えたりもしますが…でも。
(△△さんにとって僕は、やっぱり初対面ということ、なんでしょうね)
彼女の様子からして、そう思わずにいられません。
それに、△△さんのあの緊張具合を見ても、間違いなさそうです。
△△さんは僕を覚えていない……。
そんなことも、いつもなら気にする僕ではありません。
△△さんに限らず、こういうことは今までにもありましたし。
なのに、それが△△さんというだけで、あの時は何だか…ちょっと、かなり凹む自分がいました。
でもそれももう、過ぎたことです。
一緒に図書委員をしているせいもあって、今では少しずつ、△△さんと話すようになりました。