• テキストサイズ

What color?~黒子のバスケ~

第2章 水色~黒子~


現実に戻るように、授業の始まった教室で何となく目を向ければ、ちょっと離れた前方に、△△さんの席。
△△さんは手の上でペンをくるっと回して…でも、失敗。
かしゃん、と音を立てて机から滑り落ちるペンに、途端に『しまった』という表情を浮かべる△△さんが何とも分かりやすくて、微笑ましいです。

(△△さんは、ちょっと不器用なところがあるんですよね)

手先のことも…ですけど、真っ直ぐで正直な(というより分かりやすい)性格も、ある意味不器用と言えるかもしれません。

『あの頃』のままの、△△さん。
『あの頃』とは違う…あるいは、僕が知らない△△さん。

そういう色々な…たくさんの君を、僕は知りたいです。
君が僕を覚えていなくても、もう、そんなことは良いから。

そんなことを考えている僕の目の前では、△△さんが床に落としたペンを拾おうと手を伸ばしていて…でも、届かないみたいで。
こういう時、自分が傍にいたら助けてあげられるのにと思ってしまいます。

でも、少し離れた場所から、こんな風に△△さんを見ているのも、悪くないかもしれません(別に、やましい気持ちはないです)。

それに、あんまり近くにいたら、幾ら影が薄いと言われている僕でも、こうして△△さんを見ていることに気づかれて、変に思われてしまうかもしれませんし(本当にやましい気持ちとかはないですから)。

それに、そうこうしている間に、近くの男子が△△さんのペンを拾ってくれたようです。
手渡してくれる彼に、△△さんがはにかみながら、軽く手を合わせるようにしているのが見えます。

(良かったですね、△△さん)

小学校の『あの頃』から…△△さんは、本当に表情が豊かになって、明るくなりました。
人見知りはそう簡単にはなくならないようですが、それでも自分の意見をちゃんと言葉にして、周りに打ち解けようと頑張っているのが僕には分かります。

今ならきっと、絵の具がなくなってしまっても…大丈夫。

それでも僕はやっぱり、君の手助けをしたいと思ってしまうんでしょうけど……。
/ 278ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp