第2章 水色~黒子~
図書当番の時、(偶然だけど)びっくりするほど顔が近づいた時、すごくどきどきした。
部活中の黒子くんを見て、今まで知らなかった、いろんな黒子くんを知った気がした。
それが何だか嬉しくて、心がぽかぽかしたりもした。
だけど…黒子くんは駄目。
黒子くんを、好きにはならない。
あんまり楽しいとは思えなかった中学を卒業した時、私は思った。
高校に入ったら、上辺だけじゃない、本当に『友達』って呼べる人を作りたい。
そして…できたら、誰かを好きになって、恋愛だってしてみたいと思った。
けど、その相手は黒子くんじゃない。
だって黒子くんには、あんなに可愛い彼女がいる。
それが分かってて、黒子くんに告白なんてありえない。
そんな勇気も、そもそもない私だけど。
もしもそんなことをして、せっかくいろんな話ができるようになった黒子くんと気まずくなっちゃうなんて、絶対に嫌。
そこまで考えて、私は思い切り首を振った。
(違う。だから、好きとかじゃないから!)
別に…ちょっと、どきっとしたことがあるだけ。
それだけで、別に黒子くんのこと、好きとかじゃ…ない。
気になってなんか、ない。
黒子くんは優しくて、良い人で…良い…友達。
それだけ……。
それだけだから。
とにかく、いつも通りにしなくちゃ。
いつもの私に戻らなきゃ。
廊下を歩いていたら、後ろから聞きなれた声がした。
「おはよ、○○」
振り返ったら、そこには友達がいて。
私はその隣を歩いた。
「おはよう。昨日はありがとね」
「いいよー、あれくらい。って、そういえばLINE、全然見てないでしょ」
「えっ」
言われて、私は慌てて鞄からスマホを取り出した。
見てみたら…本当だ、色々…来てる……。
「ごめん、今初めて見た」
「うん、分かってる」
しゅんとする私に、友達がしょうがないな、って顔をしてくれた。
「具合悪かったんだから、しょうがないよ。それよりもう大丈夫なの?」
「うん、もう平気! すごいいっぱい寝ちゃった」
寝すぎで背中が痛いよ、って笑う私に、
「何それー」
一緒に笑ってくれる友達。
教室に着くまでに他の友達とも合流して、私はいつの間にか、いつもの自分に戻れた気がした。
仲良しの友達がいて、こうやって毎日過ごせたら、それで十分……。
それだけで、嬉しくて、楽しい。