第2章 水色~黒子~
保健室から戻った僕は、予想はしてましたが、△△さんの友達の総攻撃にあいました。
「ちょっと黒子くん!○○、大丈夫なの!?」
「二人で保健室行ったっきり、全然戻ってこないんだもん!」
「そうだよ、時間かかり過ぎだし!」
甲高い声でほとんど同時に喚かれて(しかも囲まれてしまいました)、誰が何を言ってるのかも分からないくらいです。
でも何となく、言いたいことは分かっていたので。
「△△さんなら、保健室で休んでます。先生が途中でいなくなってしまったので、その間、僕が保健室に残っていました」
先生がいなくなったからというより、僕が残りたいと思ったから…ですが。
それをこの場で言う必要もないだろうと、僕は事実だけを(嘘ではありませんし)口にしました。
すると、
「何だ、そうだったんだ」
納得した声がして、僕はこれで彼女達から解放されると思いました…が。
「それって保健室に二人きりだったってこと?」
「ちょっと、○○に何にもしてないでしょーね」
何だか知りませんが、今度は変な疑惑を持たれているようです。
(一時間近く戻らなかったから仕方がないんでしょうか。それにしてもすごい疑いです)
確かに…精神的には、何の葛藤もなかったとは言いませんし。
気がついたら、△△さんの髪に触れてしまったりもしましたが……。
『何か』したというなら、それも入ってしまうんでしょうか。
黙り込んだ僕に、彼女達はますます疑うような目をしましたが、
「バッカじゃねーの、おめーら」
呆れたような言い方で、机に足を投げ出していた火神くんがこちらを振り返りました。
途端に、今まで僕に向いていた矛先が、火神くんに向かいました。
「ば、バカって何よ! こっちは心配して……」
「心配って、そりゃま、分かっけどよ。大体、お前らがあいつを担いでいけねーのを、黒子が代わりに連れてったんだろーが」
「それは…そうだけど……」
火神くんに押されて、女子達の勢いがなくなっていきます。
それから火神くんは、何だかちょっと人が悪い笑顔を見せながら、ちらっと僕を流し見ました。
「まともに歩けもしねー奴に、何するってんだよ? それに、黒子だぜ?」