第2章 水色~黒子~
中学の部活で起きた、そして今、△△さんと石嶺さんの関係の発端になっていると思われる出来事。
それは女子バスケ部員達による、『△△さんへのいじめ』でした。
佐伯くんは当事者ではないし、あれから何年も経っているので、あやふやな点も多かったですが、聞いた内容はそれでも十分なものでした。
始まりは女子バスケ部の先輩による、些細な意地悪や嫌がらせのようでした。
その標的が△△さんだった理由は分かりませんが、それは段々とエスカレートしていき、やがては△△さんが友達だと信じていた同級生達までが同じ仕打ちをするようになったそうです。
そして、その中には恐らく、石嶺さんもいたと思われます。
当時、佐伯くんが付き合っていた(女子バスケ部の)彼女は、
『泣きそうな顔してるくせに泣かないから、もっとやってやりたくなるんだよね』
『部活に来たあの子見て、みんなでくすくす笑ってると、その顔がまた面白くてさ』
自分達の△△さんへの仕打ちを、そんな風に笑いながら話していたそうです。
「先輩の命令でやったって言いながら、面白そうに笑ってんだぜ?さすがに俺も引いちゃってさ」
いじめを楽しそうに話す様子に引いてしまった佐伯くんは、結局その後、その彼女とは別れたそうです。
そして、そんな話をした帰り際、佐伯くんは最後に、こう言いました。
「その子も可哀相かもしんないけどさ。バスケ部辞めたらいじめもなくなったって聞いたし。裏サイトとかで色々されなかっただけマシだったんじゃね?あいつが言うには、裏サイトとかってバレた時、証拠にされて面倒だとか実際それでバレた知り合いがいるとか言ってたな。確かに無視とか嫌がらせってだけで暴力なしなら、みんなで口裏合わせちまえば証拠も残らねーし。ある意味知能犯てか、こいつら、こえーって思ったよ」
女子バスケ部の話もですが、その後の佐伯くんの台詞も含めて、僕は胸の奥がムカムカしました。
(裏サイトじゃないから…直接的な暴力じゃないから、だからまだマシなんて)
よくもそんなことが言えるものだと佐伯くんに毒づきたくなるのを、僕はどうにか堪えました。
好きなはずのマジバのバニラシェイクが、こんなに不味く感じたのは初めてです。
それでも無理矢理飲み干してから佐伯くんと別れた…それが二日前のことでした。