第2章 水色~黒子~
眠っている△△さんを見ると、さっきより顔色が良くなって、苦しそうな雰囲気も消えていて、僕は少し安心しました。
「ゆっくり休んでください」
無意識に呟いた僕は、気がつくと△△さんの頭に触れるように手を伸ばしていて。
「……っ!」
僕は何をしているんでしょうか。
△△さんは、意識がないのに。
でも、あとほんの少しで触れる手を、僕は止められませんでした。
(こんなこと…良くない、ですよね)
そう思う一方で、僕は△△さんを起こしてしまわないように、そっと△△さんの髪を撫でるように手を滑らせました。
触れた頭が小さくて、今まで知らなかったそのことに(触ったことがないので当然といえばそうですが)、少し驚きました。
そういえば、いつか図書室で△△さんのすぐ傍に近づいた時にも、自分よりも小さくて華奢な△△さんに、やっぱり同じように感じたことがありました。
「△△さん…僕は……」
守りたいと思いながら傍観するばかりだった、この数日。
でもその間に、彼女…石嶺美由について分かったこともありました。
△△さんと彼女は同じ中学出身。
僕は△△さんと同じ帝光中出身、ということは、僕達は三人とも同じ中学の出身ということになります。
同じ中学出身というのは、異なる学校の出身よりも、色々と調べやすいことも多いものです。
そして、僕はそこで一つのキーワードを見つけました。
△△さんと石嶺さん。
二人は中学時代、共に帝光中の女子バスケ部に所属していた……。
そしてそこで起こったことも、僕が帝光中のバスケ部時代、3軍で一緒だった元仲間から知ることができました。
あの頃、誰もが1軍を目指して練習に励む中、佐伯くん(だったと思います)という名の彼は、いつまでも3軍の自分を何とも思わず、彼女を作ることに熱心でした。
僕は佐伯くんと親しくはありませんでしたが、女子バスケ部の彼女ができたと触れ回っていたのを覚えています。
(帝光中の女子バスケ部の彼女……)
それはつまり、△△さんと同じ部に所属していたということになります。
△△さんのプライベードを調べるようで気が引けましたが、彼女がこれ以上△△さんに付き纏うのは放置できません。