第2章 水色~黒子~
「保健室行った方が良くない?」
「じゃ、私一緒に…って、え?」
言いながら、友達が私の腕を引いてくれる。
立たせてくれようとしてるのが分かって、私もどうにか立ち上がろうとした…のに。
(え……?)
その手が急になくなって、私はバランスを崩しそうになったけど。
「大丈夫ですか」
(この声……?)
支えてくれた声は、さっきまでの友達のものじゃなくて。
(くろこ…くん…?)
上手く回らない頭が、それでも彼の声を判別した。
でも、何で黒子くんが……。
「ちょっとだけ、我慢してください」
声と同時に、肩と膝の裏に腕が触れた、と思ったら、
「っ!?」
急に感じた浮遊感に怖くなって、私はまだ頭の中がぐらぐらしてたけど、無理矢理目を開けた。
「…ゃっ!?」
それでも掠れた声を出すだけで精一杯の私の目の前では、黒子くんが優しい顔をしていた。
「このまま保健室に行きます」
「……ぁ、けど」
自分で歩くからって言いたいのに、気持ちが悪くてちゃんとした言葉にならない。
そんな私に黒子くんは少しだけ笑いかけてくれて。
それから。
「大丈夫」
「………ぇ?」
黒子くんの言葉が、どうしてか分からないけど懐かしい声に重なって聞こえて、私は…何だか……。
(なに…これ……)
懐かしいあの声を思い出しても、今まではこんなことなかったのに。
(なんか…どきどき、する……)
どうしてなのかなんて、分からない。
それに、気持ちが悪いのは変わらなくて。
力の入らない私を、黒子くんは早足で保健室まで運んでくれた。