第2章 水色~黒子~
「あ……」
「あんだよ?」
思わず声を出した僕を火神くんが睨んできましたが、別に怖くありません。
それどころか、何だか笑いたくなりました。
「火神くん。あのこと、根に持ってたんですね」
「『根に持つ』とか言うな! 俺が小さい男みてーだろーが!」
「身体が大きいのは知ってます」
「お…まえ、遠回しにバカにしてんな?」
「遠回しなんてめんどくさいこと、僕はしません」
「何だと、こら」
火神くんは凄んで見せますが、やっぱり全然、威力なんてありません。
ちなみに『あのこと』というのは、以前、△△さんが火神くんをクラスメイトとして認識していなかったことです。
もちろん、同じ部活で毎日顔を合わせるようになった今では、△△さんも火神くんのことを、クラスメイトとしても、同じ部の仲間としてもちゃんと認識しています。
そんなこと、見れば分かりそうなものなのに。
でも、もしかして。
「もしかして、あのことがショックで、挙動不審だったんですか」
「おま…っ、挙動不審とか言うな!」
「だってそうじゃないですか。△△さんのことをちらちら見て気にしてるくせに近づかないとか、みんなが△△さんと話していても、自分だけ話しかけないとか」
近頃では普通に接しているようですが、ついこの間までの火神くんは、確かにちょっと変でした。
他の人達も気がついてたみたいですよ、と断言すると、火神くんは頭を掻きむしりました。
やっぱり図星だったみたいです。
でも、僕も人のことは言えないかもしれません。
一時はそんな火神くんを、ちょっと『要注意』かも…と思ったことがあったなんて、誰にも言えませんから。
それに、本当に『要注意』なのは、石嶺美由という…彼女です。
何をするつもりかは、分かりませんが。
(△△さんを傷つけるようなことは、させません)