第2章 水色~黒子~
「ごめんごめん! ちゃんと仕分けてたつもりだったんだけど、また何か混ざってたら言ってね」
「はい」
「でも、よくこれがスコアだって、分かったわね。もしかしてバスケの経験、ある?」
「え……」
何気ないカントクの台詞に、私は固まった。
スコアなんて、確かに見たことがなければ、これって何だろう?って思うのが普通かもしれない。
けど私は『スコアブック』じゃないかって言い当てた。
だから経験があるんじゃないかって思われても、当たり前だ。
そうじゃなくたって、カントクは観察眼が鋭いんだし。
いつの間にか握ってた手の中に、じんわり汗が滲んでくるのが分かる。
こんなの、たった一言、実はそうなんですよ、とか、軽く返しちゃえば終わる程度のことなのに。
そうだよ、別にこんなの、大したことじゃない。
「あの……」
『実は昔ちょっとだけ……』
そう言おうとした私に、だけどカントクは全然違うことを言い出した。
「あのさ、それよりさっきはごめんねー」
「はい?」
いきなり変わった話題に、私は身体の力が抜けるのを感じた。
にしても、カントクは、今度は何を言ってるんだろう?
それはそれで何だか構えちゃうんだけど……。
そんな私に、カントクは何だかすごく意味ありげに、にやって笑いながら、誰にも聞こえないくらいの声で耳打ちしてきた。
「だから、さっきは邪魔しちゃってごめんねーって、こ・と(ひそっ)」
「は?」
「んふふー、良いわよねえ」
「あの……?」
耳打ちされても、全然わけ分かんないんですけど…カントク?
けど、どんなに私が不思議そうにしても、カントクは答えてくれなくて。
「私には何もないのかーって感じよね!」
最後に一言、今度はみんなに聞こえるようにカントクは声を張って、そのままびし、と外を指差した。
「次、外行くわよ! ってことで、△△さんは留守番よろしくね」
「あ、はい」