第2章 水色~黒子~
おでこにほっぺに、それから耳とかまで、あちこち舐められてちょっとくすぐったいけどそれも可愛くて、二号がすることは何でも許せちゃいそう。
けどパソコンにぶつかっちゃいけないから、二号の相手をする時は、私はいつも床の上に座ることにしてる。
今日もそうしたら、二号は待ってたように、今度は私の首筋に鼻先を突っ込んできた。
「ひゃっ、こら、二号」
ふんふん、て鼻先をぴくぴくさせながら、首をぺろって舐める感触がする。
(く、くすぐったいよ!)
でもあんまり騒ぐと、練習してるみんなの迷惑になっちゃうから、できるだけ静かにしてたつもりだったんだけど……。
「あ……っ」
あれ、って思う間もなく、手の中から二号がいなくなった…っていうより。
「黒子くん?」
いつの間にかそこにいた黒子くんが、私の手から二号を抱き上げていた。
もちろん黒子くんにも懐いてる二号だけど、これにはびっくり、っていうより、二号的に不満みたいで、黒子くんをじーーーっと睨んでる。
よく似た目が見つめ合ってるのはちょっと面白いけど、
(どうかしたのかな)
黒子くんがこんな風に二号を取り上げるなんて今までなかったから、私はそっちの方が驚いた。
もしかして、ちょっとうるさかったかな、って咄嗟に思ったけど。
黒子くんの口から飛び出したのは、私の予想とは全然違うものだった。
「二号、調子に乗りすぎです」
何と黒子くんは、私じゃなくて二号にそんなことを言い出した。
しかも何か…ちょっとこう、眉間を寄せてる…みたいな?
(うわあ、何か珍しいかも)
普段の黒子くんは、こういう表情もあんまりしない。
バスケ部に入ってから、前よりいろんな黒子くんを見られるようになった気がするけど、やっぱり珍しいものは珍しい。
それに子犬に向かって言ってるのって、何か……。
(かわいい、かも……)
ぷぷっ、って、ちょっとだけど、うっかり笑っちゃった私に、黒子くんがまたちょっと、いつもと違う表情をした。
(あれ?)
怒ってるのとも違うみたいだけど。
今の…何だろ?
すぐに元に戻っちゃったから、よく分かんなかったけど、今なんか、違ってた…よね?
それとも、気のせいかな……。
私は首を傾げながら、黒子くんの前に立ち上がった。