第2章 水色~黒子~
怖いとか、マイナス方向に感じると、つい昔のことを思い出しそうになるけど、あの時と今では何もかもが違う。
同じ『バスケ部』だって、中身は全然違うんだから。
第一、まだ始まったばっかりでしょ、って自分に喝を入れて、私はデータ入力に戻ることにした。
とにかく今は、今の私にできることをすれば良いんだ。
一度引き受けたからには、ちゃんと役に立たなくちゃ。
って、それは良かったんだけど……。
「お疲れ様でした!」
(あーっ! タイミングがーっ!)
最初の挨拶の時に黒子くんから目を反らしちゃったこと、謝った方が良いかなって思ってたのに…のに……。
タイミング掴めないまま解散とか…ああ、こういうとこ、ホント駄目だな、私…進歩してないよ。
時間が経つと、こういうことって余計言いにくくなるって分かってるのに、その後も何となく話せないまま、二日が過ぎて三日が過ぎて。
一週間が過ぎちゃったらもう……。
(ああ、もう、今更だよね……)
今更蒸し返せないよ…なんてちょこっと凹みつつ、その反面、二週間が過ぎる頃には、自分でも予想外だったんだけど、何だか私的には意外な早さでバスケ部に馴染み始めていた。
(あれ……?)
いつもと違くない?なんて自分で思っちゃうほど、私はここの人達といつの間にか平気で接してるし、会話もしてる(火神くんとはちょっと少なめだけど)。
まあ、そうはいっても今のところバスケの話だけで、それ以外の個人的な会話っていうのはないんだけど。
それにしたって今までの私なら、集団の中に入ると大抵は一人や二人、『この人苦手だな』って人がいたのに。
なのにここでは…特にそう感じる人がいない。
基本、声を出さないっていう先輩もいるけど(初めて知った時はすごくびっくりした)、今ではその人とも何とか意思疎通できるようになったし。
本当に、自分でもびっくりするほど、私はここに馴染んできてる…気がする。
初めは緊張しっぱなしで、データ入力するだけでいっぱいいっぱいだったのに。
誰かと話すなんて全然なかったし、周りを見回す余裕もなかったのに……。
今、こうして馴染めるようになったのは、私も頑張ったつもりだけど、それ以上に、いつもさり気なく声を掛けてくれる人がいたからだって、ちゃんと分かってる。