第2章 水色~黒子~
カントクの説明を受けながら、緊張した△△さんがあわあわしているのが、ここからでも分かります。
慣れるまでは大変かもしれませんが……。
(頑張ってください、△△さん)
僕にお手伝いできることなら、何でもしますから。
彼女を想うと、心が温かくなります…が。
ぱしっ!
飛んできたボールを咄嗟にキャッチすれば、犯人は(何となく分かってましたが)火神くんでした。
(危ないじゃないですか)
浮かんだ気持ちのまま、咄嗟に口にしようとしましたが、やめました。
今は部活中です。
ボールが飛んでくるのは当たり前といえばそうですし、火神くんのことですから、絶対(余計なことまで)言い返してくるに決まってます。
なので、そのまま練習を続けていると、火神くんは面白くなさそうに眉間を寄せました。
やっぱり、さっきのはわざとだったみたいです。
かといって、僕がそれに乗る理由もありません。
あくまでいつも通りな僕に、火神くんもいつも通りに戻った…と思ったのは間違いでした。
休憩時間になって、みんながそれぞれ自分のドリンクやタオルに手を伸ばす中、
「おい、お前」
そう言って唐突に火神くんが絡んだのは、
「え、は、はい!?」
それまで入力作業をしていた△△さん…でした。
驚いた彼女は動かしていた手を止めたまま、その場で固まってしまいました。
そうでなくても大柄な火神くんに対して、△△さんは他の女子よりちょっと背が低い上に、今は椅子に座っているせいで、更にその差が広がっています。
しかも火神くんは何やらしかめっ面で、これでは女の子に怖がるなという方が無理というものです。
「か……」
火神くん…と、僕が呼びかけようとした、でも、その前に『それ』は炸裂しました。