第2章 水色~黒子~
聞こえたような気がした『あの声』で、ちょっと心が前向きになったのは、本当。
だから私は、そのまま先輩の話を聞いてみることにした。
で、気が付いたら……。
「歓迎するわ、△△さん!」
最後には、先輩の『お願い』を引き受けてる私がいた……。
『あの声』のことは誰にも話したことがないから、結局、私は先輩の新型パソコンに釣られたってことになっちゃったっぽいけど、まあ、それは仕方ないかな。
だって、昔の思い出…なんて、いちいち話すもんじゃないし。
第一、やっぱり恥ずかしいしね。
ただ、私からの入部条件として、試験の時は(試験前を含めてっていってもそんなにしょっちゅうはないけど)、そっちを優先させてもらう約束を取り付けた。
それから、これは先輩の方から言ってくれたことだけど、基本はデータの管理がメインになるから、他の部でいうところの『マネージャー業』については当面考えなくて良い…らしい。
「ウチではね、自分のことは自分でやる!が基本なの。まあ、連中が試合でへばってる時は、さすがにその限りじゃないけど」
なんて、一度陥落(?)したら最後、あっという間に話は進んで、私は今、バスケ部員達の前に立っている。
部員の一人一人を紹介してくれながら、先輩…あ、じゃなかった、カントクは私の肩を叩いた。
「今日から私の補佐をしてくれることになった、△△さんよ」
よろしくね、と続けるカントクの隣で、私は緊張しながら挨拶した。
「△△です。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げた後、私は驚いたように目を見開く黒子くんに気がついた。
そうだった。
私、黒子くんからの誘いは断ったくせに、カントクの勧誘(誘惑?)引き受けちゃったんだ。
黒子くんにしたら面白くないよね……。
今更だけど、そのことに気づいた私は、黒子くんの目をまともに見ることができなかった。