第2章 水色~黒子~
その後、私は『とある物』によって、落ちた。
っていうより、正確には一瞬、落ちそうになった。
「この最新モデル。部活の時、自由に使ってくれて構わないから」
『とある物』…それは最新モデルの端末……。
ここは新設校だから新しい設備が揃ってるけど、最新モデルが出るたびに入れ替えるなんて、当たり前だけどありえない。
だから授業で使うパソコンは、今ではちょっと型落ちになっちゃったモデルだけど、先輩の手にあるのは、最近出たばっかりの、何と最新モデル。
別に私はメカオタクってわけじゃない…けど。
やっぱり色々勉強したり、資格を取ったりするからには新しいのを使ってみたいっていうのは、すごくある。
それを部活でデータ作業をする時には、この最新モデルを使わせてくれて…その上。
「部活中、私はほとんど練習の方につきっきりだから、これは△△さん専用みたいなもんね」
とか、
「どうせどっかに入らなきゃいけないんでしょ? 入りたくもないとこに無理矢理入るより、これってお買い得だと思わない?」
とか。
そんなセールストークもどきに、ちょっと乗せられかけた…けど。
そんな私の中に、黒子くんに誘われた時と同じものがよぎった。
(バスケ部…か……)
考えたら、また心が重くなる。
もう大丈夫なつもりでいたけど、やっぱりまだちょっと、トラウマみたいになってるんだって、感じる。
だって思い出すと、気持ちが重くなって、何だか心が寒くなってくるから。
ああ、まだ駄目なんだな…って、思った。
だから、黒子くんに断ったように『やっぱり無理です』って私は言おうとして。
そうしたら……。
『大丈夫』
(え………?)
昔聞いた『あの声』が聞こえた気がした。
そんなこと、あるわけないのに。
だけど何だか、重くなりかけてた心が、少し軽くなってるような、そんな気持ちになっていて。
(こんなこと…あるのかな……)
不思議な気持ちもあるけど、『あの時』の声に今でも安心したり、気持ちが落ち着いたりするなんて。
(私…もう高校生なのにな)
それなのに、昔の『声』に、まるで助けられたみたい。
駄目だなあ、って思うけど、でも。
(大丈夫…か……)