第2章 水色~黒子~
何だろ。
有名な人なのかな。
わけが分かんなくてついていけない私は、一人でちょっと疎外感……。
そうしたら。
「うっせーよ。おい、お前。とにかく来い」
言い終わるより先に、火神…くん?(友達もそう呼んでるから良いのかな)の手が、私の手を掴んできて。
「ちょ…っ」
逃げようとする私と、
「だからやめなってば」
「本当に先生、呼んでくるよ!」
助けてくれようとする友達と、そんなことはスルーな火神くんと。
それだけしかいなかったはずの教室で、だけどいきなり。
べしっ!
「ぐぁっ!」
その誰でもない掌が、火神って人の顔面に正面からめり込んた。
そのショック?で、私は自由になれたんだけど、
いきなり飛び出した手の主は……。
「……黒子、くん?」
彼の手…だった。
でも、いつの間に教室に来てたんだろう?
(全然気が付かなかった)
けどそれはみんな同じだったみたいで。
「びっくりしたー」
「いつ来たのー?」
で、火神くんに至っては。
「ってーな、テメー! 邪魔す…ぐはっ」
最後まで言い終わらない内に、今度は脇腹に黒子くんの手がヒットしていて。
「そっちこそ、迷惑ですから静かにしてください」
そんなことしながら、あくまで冷静な黒子くんは、更に火神くんの膝をかくん、と軽く蹴るように崩しながら。
「それでは、また明日。気をつけて帰ってください」
その台詞だけはいつもとまったく変わらずに、私達に向かって軽く会釈までしてくれる。
その光景に若干引きながらも、
「か、かえろっか」
「うん……」
私達は黒子くんに言われるまま、教室を後にしたのだった。
そんな帰り道。
「黒子くん、大丈夫かな」
自然、話題はさっきのことになったけど。
「平気でしょ、あの二人って、同じバスケ部だし」
「それもそっか」
納得してる二人に、私だけがついていけなかった。
「え、そうなの?」
二人が同じバスケ部なんて、知らなかった私だけど。
「「知らないの?」」
「そういえば火神くんのことも知らなかったよね、この子!」
「あ、そういえば……」
「え? え?」
それって、知らないといけないこと?
(え? もしかして、私だけ知らないとか?)
わけが分からないまま、私は友達にいじられながら(お陰で色々教えてもらったけど)、家路についたのだった。