第2章 水色~黒子~
「入力得意なんだな、って、実は当番の時に…何度か……。速度や正確さだけじゃなく、△△さんなら信頼できると僕は思いました。そうしたらカントクに思い当たる人がいるんでしょ、って見破られてしまって」
何か顔に出てたみたいで、参りました…って、黒子くんは下を向いた、けど。
参るのは、はっきり言って私の方でしょ、この場合!
でも何か、こうしてると私より黒子くんの方が被害者(っていう表現も変かもだけど)っぽいような……?
だからって、私が引き受けなきゃいけない理由なんて何処にもないんだけど。
それに…バスケ部(ここのじゃないけど)には正直、良い思い出がない。
バスケは今でも好きだけど、バスケ部は……。
細かいことなんて言いたくないから言わないけど(昔のことだし)。
とにかく。
「黒子くん、私は……」
悪いけど…って切り出そうとする私に、黒子くんは少しだけ笑って、頷いた。
「構いません」
「……え?」
「初めから無理にお願いするつもりはありませんでしたから」
黒子くんが言うには『カントク』の命令でとりあえず、お願いしてみただけ…ってことだった、けど。
「本当に、大丈夫なの?」
って何、黒子くんの心配してるの、私。
勝手に言い出してきたのは向こうなんだし、私には関係ない…し……。
でも何だか居心地が悪くて、私は黒子くんから目を反らす。
鳴り出したチャイムを言い訳にするみたいに、私は教室に戻ろうとした。
「じゃぁ……」
別に悪いことしたわけじゃないのに、何となく気分がすっきりしないのは、何でなのかな。
それなのに。
「分かりました。カントクには僕からお断りしておきます」
いつも通りの穏やかな声が後ろから聞こえてきて、私はちょっと立ち止まりそうになりながら、それでも何でもない振りで自分の席に戻った。
(これで良いんだ)
これで、この話はおしまい。
そう思った私は甘かった…らしい。