第2章 水色~黒子~
理解が追いつかない私に、黒子くんは丁寧に説明してくれた。
男子バスケ部の監督兼マネージャーは、二年生の女子生徒がしていること。
彼女は色々なデータを解析して練習メニューを組んだり、作戦を練ったりしていること。
だから正確な情報の入力は必須で、今までは彼女が一人でしていたけど、それも段々きつくなってきていること。
そこで、彼女がデータの解析とか作戦とか、考えることに集中できるように、データの入力や更新といった、データの管理面を任せられる人間が欲しい…ということ。
お陰で事情は分かったけど、でもだからって。
「どうして私?」
他に幾らでも候補はいそうなのに。
何で、よりによって私なの。
だって私、その『カントク』さんに会ったこともないんだよ?
どうしたって納得できるわけない私に、黒子くんは誰の目にも分かるくらいに、はっきりと顔を曇らせた。
「すみません。僕のせいです」
「え?」
「カントクから、データ管理を任せられる補佐が欲しいと聞いた時、僕は咄嗟に△△さんのことを思い出してしまいました」
「私……?」
どうしてまた…と私は思う。
選択授業で私がパソコンを取ってるって話は、そういえば黒子くんにしたかもしれないけど。
だからって、データ管理が得意とか、そういうことにはつながらないんじゃ……。
それにバスケ部とか…建前だけでも『マネージャー』とか、いきなりそんな……。
(ありえないんだけど……)
無理ムリむり……。
頭の中で全否定に入りながら、私は唇を噛んだ。
(だって私…まだ……)
ぎゅっ、と握った手に、自然に力が入る。
どうやって断ったら良いんだろう。
『やりたくない』って普通に言えば、それで済むのかな。
いつかは何か部活に入らなきゃいけないって分かってるけど。
断る方法を探している私の答えを、黒子くんは待っていてくれたみたいだった。
でも、いつまでも返事をしない私に、
「本当にすみません」
もう一度謝って…それから。
「カントクは、データの入力が速くて正確で、信用できる人材が欲しいと言っていました。それで僕は、図書室でデータ入力をしていた△△さんを思い出したんです」
「ぇ……」
見られてたんだ、って驚く私に、黒子くんが薄く笑った。