第3章 青色~青峰~
俺は腹を括って、△△を見た。
目の前にいるこいつの顔をちゃんと見て、けど本当は…できれば目を反らしちまいそうな俺がいる…って、ヘタレか俺は!
(くそっ、こいつの前だと、どうしたら良いか分かんねえ)
二度と傷つけたくねえし、こんな風に、目の前にいんのにまともに喋れもしねえとか、そんなのはもうゴメンだってのに。
じゃあ、どうしたら良いんだよ、って考えたら、俺は……。
「あん時は、悪かった」
気づいた時には、それだけが俺の口から零れ落ちてた。
で…自分で、突っ込んだ。
(あん時って、何だよ……)
突っ込むってより、脱力しちまう。
『あの時』のことは、△△も覚えちゃいるだろう。
でなきゃ、こいつもこんな態度とらねえだろうし。
けどよ、それにしたって、我ながら鈍くせえ台詞…っつか、ダメすぎだろ。
「はぁ……」
ほとんど無意識に溜息を吐きながら、俺は頭を掻いた。
真っ直ぐ△△を見てられなくて、俺の視線も宙に浮いちまってる。
(何処見りゃ良いか分かんねえし。どうすりゃ良いんだよ…っとに)
こいつが俺の前で笑うようにするには、俺はどうしたら良い。
らしくねえほど、ごちゃごちゃ考えちまってる俺は、自分がしかめっ面になってるのが分かる。
分かるけど、どうしようもねえ。
そんな俺の視界の外…つか、正確には下の方で、△△の声がした。
「別に良いよ。そんなの」
「……え?」
俺は思わず△△を見たが、こいつはしっかり俯いちまってて、どんな顔してんのかが分かんねえ。
分かんねえけど。
(良いよ…って感じじゃねーだろ、どう見ても)
声の調子からして、本音じゃ『全然良くない』って聞こえんだよ。
それなのに。
「もう昔のことだし」
「おま……」
「それに、本当のことだし」
「…何だと?」
しょうがないじゃない?
なんて、そんなこと言いながら、やっと上を向いた△△の顔を見た俺は、気が付いた時には、
「何がしょうがねえんだよ!?」
通じない…こいつに誤解されたままの昔が堪らなくて、声を荒げちまってた。