第3章 青色~青峰~
見れば見るほどデカい施設だ。
スポーツ施設の他にショッピングモールもあるってんだから、どんだけ広いんだ?
「くっ、あいつだったら、絶対迷子決定だな」
ここにいるはずのない奴を思い出した(しかもほとんど無意識だ)俺は、バカか、と自分に突っ込んだ。
「クソ……っ」
分かってる。
俺はあいつの顔が見たくて堪らないんだ。
IHの最中は、会場が遠いから会えるはずもねえし。
終わって戻った今にしたって、夏休みの間は顔を合わせる機会なんてありゃしねえ。
テツみたいなポジションなら、簡単に会えたりもするんだろうけどな。
生憎と、△△にとっての俺は、その真逆みたいなもんだ。
会う口実もありゃしねえ。
学校なんざどうでも良いが、休みが終われば…学校が始まれば、そこに△△がいる。
「って、マジでバカか…俺は」
考えるほど、あいつのことばっかが頭に浮かんで、ドツボにハマる自分がいる。
そんな自分に『バカだろ』って毒づいたって、頭の中はどうしようもねえ。
しかも…くそっ。
マジで末期だぜ。
ゴール下に△△が見えるとか、勘弁しろよ…って……。
がんっ!
「あー、またはずれた~~」
マジで…あいつがいた。
しっかりしたフォームで投げたボールは、弧を描いてゴールに向かう。
なのに入らないのは、距離が足りないからだ。
あと少し奥を狙うようにボールを飛ばせれば、△△のシュートは間違いなく決まる。
昔だったらすぐに教えてやれたことも、今じゃできない。
△△も、俺の言葉なんか聞きゃしないだろう。
リングに弾かれたボールが、俺の足元まで転がってくる。
反射的に拾った俺に、△△は、
「あ、すみませ……っ」
駆け寄ってきかけて…そこで止まった。
俺に気付いて。
俺を認識した途端に、△△の表情が変わる。
△△は俺から目を反らすと、困ったみたいに目を泳がせた。
それが、俺にはどうしようもなくて。
「お……」
声を出しかけた俺に、△△がわざとらしく声を張り上げた。
「ごめん!勝手に使って」
さすがに無視して逃げるってわけにはいかなかったんだろうけどよ。
だからって。
「おい、待てよ」
言うだけ言って、勝手にいなくなるってのもどうなんだよ。